おならをする人。

ぽろちと配偶者、引っ越しを考えている。

つい1ヶ月程前、不動産屋のミスよって、ぽろちと配偶者宅に突然ムショ上がり風の男が侵入してきた。詳細は読んで頂けると助かるのだが、結果その男が得体の知れないヤツではなくて、ただの修理業者だったため、ひとまずぽろちと配偶者は難を逃れた。とはいえ、気ままに自宅警備員として生きるぽろちの活動を脅かす、大変許し難い出来事であったのは間違いない。安寧の地である自宅が他人の侵入で一気に平穏を壊される…絶対に考えられない想像すら出来ないことが、ぽろちと配偶者に降りかかってきたのだ。

そういうわけで、ぽろちと配偶者は引っ越しを考えるようになった。普段はクレームとは無縁、なるべく争いごとを避けてきたぽろちと配偶者だが、今回のことは真剣に不動産屋に伝えた。どれだけ恐怖を感じ不快だったか…ということをしっかり伝え、不動産屋からは「二度とこういったことはしない。本当に申し訳ない」と謝罪を頂いたものの、一度崩れた信用というものは、なかなか戻らない。不動産屋を信じられなくなったぽろちと配偶者は、一から出直すために本気で家探しを始めたのだ。

不動産屋の店頭に貼ってある広告を見たり、日々ネットで情報収集。しかし、なかなか好みに合う家が見つからず、先日とある不動産屋に足を運び、情報を仕入れることにした。配偶者と一緒に不動産屋に行ったものの、英語がさっぱりなぽろちは配偶者に任せ切り。配偶者が白馬が似合いそうな王子様系スタッフさんとやり取りしている横で、ぽろちは英語がわからないながらにも話を聞いていたその時、異変は起きた。「ブッ」という鈍い音が聞こえたと同時に、何とも言えない臭いにおいが、鼻孔を容赦なく突き抜けたのだ。

これは…おなら…？

明らかにおならだとわかる音がした瞬間にやばい臭いが突然漂ってきて、ぽろちはすごく動揺してしまった。動揺と同時に若干の笑いが込み上げてきたものの、ぽろちは無表情でおならを対応した。ちなみに、ぽろちはおならをしていない。では配偶者が…？こんなオフィシャルな場面で…と、配偶者を忌々しく思ったが、配偶者は表情一つ変えず、真顔で王子様系スタッフの男性とやり取りを続けながら、無言でぽろちに訴えていた。「俺はしていない」、と。

ではまさか…と思ったぽろちは、配偶者とやり取りをしているこの王子様系スタッフの男性を見た。乙女心をくすぐるような、儚げで憂いがある表情を浮かべているこの王子様系スタッフが、まさか…。と思った瞬間、ぽろちは再び鼻孔を破壊する臭いを浴びせられたと同時に、見た。

王子様が、少しだけお尻を上げておならをしているシーンを。

しかも、今度は3回続けてかましてきた。誰にだってお腹の調子が悪い日ぐらい、ある。それはもちろん理解できるものの、こうも堂々と臭いおならを浴びせられて、ぽろちはただただ呆然としてしまった。なんだかこの王子様系スタッフ、おならをすることに手慣れている。平然を装い真顔で対応していた配偶者にも、ついに限界が来たのか、「また検討したいと思います」と笑いをこらえて切り上げ、おならに別れを告げた。不動産屋を出た瞬間、アクシデントに遭遇したぽろちと配偶者は思った。外の空気が、これほど美味しいとは思わなかった。

以前、海外ではおならよりもゲップの方が下品だと聞いたことがある。しかし、例えそうだとしても、普通に考えて万国共通、人前でおならをすることはマナー違反だ。出てしまったものは仕方ないにしろ、王子様系スタッフからは、「やむを得ず出てしまった」というより、「おならの何が悪いの？」といった平然とした態度が感じられた。

幸か不幸か、エディンバラに来てからというものの、色々なことに出くわすようになってしまった。

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