さようなら、日清カップヌードル。

日清カップヌードルを、無駄にしてしまった。

その日ぽろちは、日本から持ってきた日清カップヌードルを食べようと目論んでいた。この日の夜、配偶者が飲み会で不在。となると、食事の準備をする必要がないし、わざわざ自分のために料理をするのも面倒くさい。なので、カップヌードルを食べるにはうってつけの日だった。

たかがインスタントラーメン、と思われるかもしれないが、海外にいると日本のインスタントラーメンは貴重だ。貴重だから故、ついもったいないという気持ちが先走り、なかなか食べる機会がない。たまに食べようと思う日もあるが、なんとなく踏み出せない。たかがインスタントラーメンが、こんなにも敷居が高い存在になるなんて思ってもみなかった。

配偶者を送り出した後、ぽろちはすぐさまインスタントラーメンを食べようと決意した。こういうことには、勢いが必要だ。躊躇う時間が無駄である。ぽろちは日本から大量に持参したインスタントラーメンを慎重に吟味し、今夜のお供は日清カップヌードルのシーフード味にキメた。

正直、配偶者に内緒で日本のカップヌードルを食べるのは、気が引けた。配偶者もいる時に一緒に食べた方がいいかな…とも過った。お恥ずかしいが、仮に自分が不在時に、貴重なインスタントラーメンを配偶者が食べていた…なんてことがわかったら、尋常でいられなくなるかもしれない。だが、開封してお湯を注いだら、配偶者のことなんてどうでもよくなった。彼は彼で、きっといつか食べる機会があるだろう。とりあえず今宵は、ぽろちが堪能させて頂く。

3分経って封を開けると、ふわっと温かいあのシーフード特有の匂い広がる。これだよ…！と思いながらも、ぽろちは興奮を抑えつつ麺をすすった。

だが、何故か美味しいという気持ちにならなかった。2、3回すすっても、全く美味しさを感じない。おかしい。やはりイギリスに住んで味覚がおかしくなったのかな…と不安になりながら、具のタマゴやカニカマを食べると、何故か辛かった。まるで、からしが大量に塗られているかのように、からい。

うわ…と思ったのもつかの間、突然ぽろちは吐き気に襲われた。大急ぎでトイレに駆け込み、即リバース。シーフードヌードルを食べて、突然のリバース。何が何だか本当にわからなかったが、大事なカップヌードルを無駄にしてしまったことは、ぽろちの心に深い傷を残した。

一通りリバースした後、傷心のぽろちは嫌な予感がした。カップヌードルの賞味期限を急いで確認してみた。切れていた。 2ヶ月前に、切れていた。

いやいや、まさかたった2ヶ月で…。呆然としながらも、他のカップヌードルの賞味期限を確認すると、これまた全て切れていた。いや大丈夫なはず…と焦ったぽろちは、全てのカップヌードルにお湯を注いで食べてみたが、これまた撃沈の味。完全に、腐っていたのだ。

そういうわけで、全ての貴重な日清カップヌードル達は、あっけなく終焉を迎えた。

はっきり言って、未だに信じられない。今までずっと、インスタント食品の賞味期限は、所詮ただの飾りにすぎない、と思っていた。気にしたこともなかった。それがまさかたった2ヶ月の過ぎただけで、吐き気を催す程腐ってしまうらしい。カップヌードルはこんなにも、貧弱な存在だったのだ。

カップヌードルを大量にストックしている方は、そう珍しくないだろう。特にぽろちと同じように、海外在住のため、大量にカップヌードルを購入したはいいものの、カップヌードルが貴重すぎて食べず保存している方。是非戸棚を開けて確認して欲しい。これは、危険である。


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