欲しけりゃくれてやるっ!鶏ガラスープの素。

英国在住の身になってからというもの、「羨ましい」や「憧れる」などと言われることが多くなった。もちろん、上記のようにそう言う人程、心に思っていなく、ただの社交辞令で言う方が大半だと思うが、中には少々引いてしまう程の反応をする方もいる。ぽろちはこれまでイギリスに対して特別な感情や憧れを持ったことがないため、正直、「お洒落な国イギリスに住んでるなんて羨ましいし、毎日優雅にアフタヌーンティーしたい」と言われると、かなり困る。どの辺りがお洒落なのかイマイチわからないし、紅茶の国であるはずの紅茶はティーバックだし、トイレは絶望的だし、インスペクションと呼ばれる借家の立ち入り検査が定期的にあるし…。特にこの、インスペクションにはかなり悩まされている。

 (写真はイメージです)

先月ぽろちと配偶者は、イギリスビザ切り替えと申請のために、日本へ一時帰国した。帰国直前の1ヶ月は色々忙しいにも関わらず、インスペクションや壁修理などといった家関係の諸事情で来客が多く、非常に慌ただしい日々だった。元々来客が苦手な上に、赤の他人にトイレを汚されたという二重、三重のストレスに悩まされたぽろちと配偶者。もう絶対に他人にトイレを貸さない決意をしたし、今後またインスペクションがあった時は、強気で立ち向かう姿勢で挑もうと、そう強く思ったものだ。幸い、しばらくは家関係の諸事情で来客はないはず…そう思っていたのだが…。

油断していたぽろちと配偶者の元へ再びインスペクションを知らせるメールが届いたのは、帰国日の前日だった。本当に意味がわからない。何度インスペクションをしたら気が済むのだろうか。不動産屋は「ガスの安全チェックと、備品のチェックを…」などと言っていたが、前回来た時一度に済ませよ!と、かなり腹が立った。今までは嫌々だが立ち会うことはできたが、今回は日本滞在中にインスペクション。かなり困る。家主が留守時に他人が家に入るなんて…。なんとか日程を変えてもらおうとかけあったが、「大丈夫。ただチェックするだけだから、いなくていいよ」と言われてしまった。

これはかなりマズい状況だ。ぽろちは半泣きになりながら「我が家は土足禁止です。必ず靴を脱いで下さい」と玄関と家の壁に張り紙を貼ったし、配偶者は土足禁止のメールを不動産屋に送った。また以前、壁修理の親父に勝手にトイレを使用された上に流さない、という許し難き侮辱行為を受けたため、少々失礼かもしれないが、トイレには「使用後は必ず流して下さい」との張り紙を貼った。他にも色々やりたいことはあったが、何も出来ずぽろちと配偶者は泣く泣く帰国した。とにかく、何事も問題なくインスペクションが終了することだけが、望みだ。

しかし、そんなぽろちと配偶者の望みは、あっけなく砕け散ったのだ。イギリスに戻り、我が家に入った瞬間、ぽろちと配偶者は異変を感じた。

「なんか床、汚れてない…?」

何故か、床が汚れている。おかしい。念入りに掃除して帰国したはずなのに、何故か床が汚れているのだ。ぽろちがその汚れをじっくり調査すると、靴の跡と判明。これは、許せない。張り紙もメールもしたのに。神経を尖らせて家の中に入ると、これまた異変を感じた。

「バスルームの扉が開いてる…」

普段バスルームの扉を開けっ放しにすることなんて、まずない。必ず閉めているはずの扉が、何故か開いていたのだ。急速に不安が押し寄せたぽろちと配偶者は、恐る恐るバスルームに向かう。すると、ありえない光景がぽろちと配偶者の目に入った。

「便座が開いている…」

便座が、開いていたのだ。ありえない。ぽろちはトイレ使用後は、必ず便座を下げる主義だ。正直、便座を開けっ放しにしている神経がよくわからないし、理解不可能だ。便座を開けていることで使用後の匂いが充満する気がするし、とにかく使用後は全てを抹消する意味を込めて便座を下げる。というか、何故トイレに限って便座を開けっ放しの人が多いのだろう。出したらしまう。使ったら戻す。開けたら閉じる。当然のようにトイレの便座も下げて欲しいし、ぽろちはこれでもトイレには敬意を払っているつもりだ。

どこにもぶつけられない怒りが、ぽろちと配偶者を支配していた。本当に、許せない。これだからイギリスは嫌なんだ!怒りが最高潮だったが、とりあえず気持ちを落ち着けるために、炒飯を作ろうとしたぽろち。ぽろちにとって炭水化物は、気持ちを落ち着ける安定剤みたいなものだ。炒飯に入れる鶏ガラスープの素を調味料スタンドから探していると、妙な違和感を感じた。きちんと陳列しているはずの調味料達が、何故かぐちゃぐちゃ。漁られたような、跡がある。そして、あるはずの場所に鶏ガラスープの素がない…。


呆然としたぽろちは、とりあえず別の棚にストックしていた鶏ガラスープの素を使用して炒飯を食べたが、安定剤である炭水化物を摂取しても、この抑えきれない怒りと形容し難い感情は収まらなかった。

汚い床に、便座が開いたトイレに、消えた鶏ガラスープの素。疑惑だらけのインスペクション。イギリスに憧れている諸君に、強く言いたい。インスペクションだけではなく、日本では考えられないようなありえないことが、この国では多々あるのだ。もしかしたら、それは、日常茶飯事かもしれない。


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