不法侵入者と汚されたトイレ。

本日、ぽろちと配偶者宅に不法侵入者が現れた。

朝食後、諸々の準備を終えまさに配偶者がこれから仕事に行くという時に、突然玄関の方で謎の物音が聞こえた。リビングにいたぽろちと配偶者は、当初は下の階からのちょっとした物音だろうと…と然程気に留めておらず、先日行った猫カフェで出会った猫のセバスチャンの話で盛り上がっていたのだが、その怪しい物音が目と鼻の先で聞こえる上に鳴り止まない。そして、明らかにドアが開いた音なのだ。不審に思ったぽろちと配偶者が玄関に行こうとした時、リビングルームと廊下を繋ぐドアが勢い良く開いたのだ。

(写真はイメージ画像です)

驚いたぽろちと配偶者の先には、作業着姿の小太り老男。目が合うと「ハーイ!」と手を上げて挨拶してきたのだ。突然何故か急に家に入って来て「ハーイ!」と挨拶されても、全く思考がついていかない。そもそも何故この不審な男が我が家に勝手に入ってくるのか…。ぽろちと配偶者の平穏な早朝を乱したこの男に、ぽろちと配偶者は呆然としながらも、ぽろちの脳裏にはイギリス警察の電話番号が過っていた。意を決して不審者に口火を切ろうとした配偶者は動揺していたのか、「あのう…うちは土足禁止なので靴を脱いでいただけますか…」と的外れな事を言っていた。

不審者はそんな配偶者の言う通りに靴を脱いだ後、「オッケー!今からおうちの点検するからよろしくね!」と言い、リビングルームの写真をいきなりパシャパシャと撮りだした。そして「どこか不都合な点はないか?」などと配偶者に矢継ぎ早に質問をし、再び撮影に勤しむ。勝手知ったように家の中を調査する不審者は、実は不動産屋だったのだ。

(写真はイメージ画像です)

イギリスの住宅事情は、日本とはまるで違う。基本的に日本のマンションやアパートにあたるフラットと呼ばれる物件の多くは、家具や電気製品が付いている(Furnished)。当然退去する時は持ち運ぶことはできずそのまま置いていくのだが、永住する予定がないぽろちや配偶者のような短期滞在者には便利ではあるし、経済的負担が少ないことも利点だと思う。しかし当初ぽろちは、言わば中古品を使用しなければならない状況が酷くストレスで、慣れるまでかなり時間がかかった。

つまり、フラットの他に家具なども大家さんから「借りている」状況である。借り物なわけなので大事に使用する事が当然だが、形あるものには寿命があり、破損などの問題も出てくる。また、「借りている物」なのか「個人的に購入した物」の区別がつかなくなりトラブルが起こる可能性がある。こうしたトラブルを事前に防ぐため、インスペクション(Inspection)とよばれる定期的な借家の立ち入り検査がおこなわれる。

不動産屋によって違うが、三ヶ月おきに検査のところもあれば、半年〜1年に一回のところもあるという。また、事前にインスペクションの通知があるところもあれば、抜き打ちもあり、全ては不動産屋に委ねられているということだ。ぽろちと配偶者のインスペクションは1年に1回おき。配偶者曰く去年は通知が来たとのことだが、今年は「インスペクションしたいけど大丈夫?」との連絡しかなく、日時などは一切通知してこなかったのだ。しかし、不動産屋は「今日って連絡したよ?」といけしゃあしゃあと言うのだ。

(写真はイメージ画像です)

そういうわけで、「抜き打ち」インスペクションとなったのだが、いくら不動産屋といっても隅々まで見られるのは困るし、不快である。部屋はそれなりに片付いていたが、やはり他人を迎える前にはそれなりに掃除が必要なのだ。「たくさん注意されるのだろう…」と覚悟を決めたが、不動産屋はじっくり見る事もなく「とてもきれい。ラブリー」とだけ言い、写真を撮っていった。そして全ての部屋を見終えた後、「洗面所の壁の色が変色しているのが気になるから、この写真を大家に送って修理を促すよ」と言ってくれた。ちなみに特別なことがない限り、家の修理や家具の買い替えの費用は大家が負担するシステムだ。

不審者疑惑も晴れ、なんとか無事インスペクションが終了した。これであとはこの不動産屋が帰れば配偶者も出勤するし、いつも通りぽろちはゴロゴロできる…と思っていた矢先、不動産屋が突然「お腹痛いからトイレ借りていい?」と言い放ち、ぽろちと配偶者から許可を得る前にトイレに入ってしまった。心が狭いと思われるだろうが、自宅のトイレを他人の腹痛の旅立ちの手助けに使用されて、ぽろちは泣きそうになった。この後ぽろちは、時間をかけてトイレ掃除に励んだのは言うまでもない。

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