ブラウンソース推してくよ!

イギリス料理の味付けは、優柔不断で曖昧だ。

数年前、パブでパブ飯の定番であるフィッシュ&チップスを初めて食べた時に、そう思った。何しろ、味がない。もちろん全ての料理に味がないわけではなく、とりあえず困ったときのグレイビーソース!をかけた料理や、塩胡椒でそれなりに調えた料理もある。しかし、雀の涙程の塩気しかない料理や、味付けがほぼない状態で堂々と登場することも多い。ぽろちが上記で食べたフィッシュ&チップスも味がなく生気がないものだったため、非常に動揺した。そして、それをもりもりと美味しそうに食べていた配偶者に対して困惑したのを覚えている。


イギリス料理の味付けが乏しいからなのかは定かではないが、パブには大抵、ケチャップ、マヨネーズ、ビネガーなどといった調味料がテーブルに鎮座している。それら調味料は調味料入れに中身を移されることなく、購入したままの姿で堂々と登場。また、時に蓋に調味料が無惨にもこびりついている寂しい姿を見ると、何とも安っぽく見えてしまい「安い・旨い・汚い」的な食堂を思わず思い出して、一瞬残念に思ってしまうのだが、よく言えばこれら調味料を駆使し、薄味をカスタマイズできるのだ。イギリスの料理が意外と悪くない、いやまずい、と賛否両論になるのは、これらソースと自身の舌との相性にもよるところが大きいのではないだろうか。


中でもHPソースは、ぽろちと配偶者のお気に入りの調味料だ。HPソースは、ブラウンソースという名のジャンルに所属しているソースで、少々酸味がありスパイシー。モルトビネガーにトマトを混ぜ合わせ、それをベースにタマリンド・エキス、フルーツや、甘味料 やスパイスを加えて作られている。ポテトやフィッシュ&チップスなどの揚げ物にかけるとなかなかおいしい。ちなみにぽろちと配偶者は、ポテトをテイクアウトした時は必ずかけてもらっている。


HPソースは、1899年、ノッティンガムの食料商人だったフレデリック・ギブソン・ガートンによって開発された。しかしガートンは当時負債を背負っており、金に困っていた。ソースの噂を聞きつけた、ミットランドビネガー会社の創始者(HPソース会社前身の会社)のエドウィン・サムソン・ムーアが、ガートンの負債£150を肩代わりする代わりに、HPソースのレシピをガートンから買い取った。その後、ロンドンの国会議事堂のレストランでこのソースが使用されるようになり、さらにこのソースはHPソースという名前で販売され、1903年以降英国ナンバーワンのブラウンソースとして君臨する。つまりHPソースはイギリスの家庭に欠かせない定番のソースになったのだ。HPソースのHPは、英国議会を意味するHouses of Parliamentから由来しているとのこと。


甘みと酸味が絶妙に効いているため、クセになる。ビネガー好きにはおすすめだ。しかし、ついついHPソースをかけすぎてしまい、プレートに盛られている料理全てがHPソース味になってしまう可能性もあるため、かけすぎにはご注意を。


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